戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その9(終)

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平成27年5月に、旧会津藩士の末裔の余市町山田町在住の「吉田ひろかず」氏が作成した

「余市町の会津関係地図」

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御受書------------------------- 余市水産博物館(入舟21番地)*入館料300円*冬期閉館中

記念樹------------------------- 余市町役場前(朝日町26番地)

殉節碑/日進館跡----------------(黒川町7丁目78番地)*会津本国と同じ名前は恐れ多いと言う事で「日進館」と命名

開村記念碑/記念植樹------------(黒川9丁目58番地)

会津藩士の墓/記念樹2本松------- 美園墓地(美園町33番地)

記念樹(杉)記念樹(赤松)は、山田町にあります

緋之衣りんご------------------- 吉田観光農園(山田町7番地)*地図の作成者


この地図と同時に、「余市町における、会津藩士の足跡」という小冊子も出されています

吉田浩一さんは、会津藩士の吉田家の4代目、余市町議会議員です

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■りんご侍

吉田観光農園には、樹齢100年を超える「緋の衣」の老木が現存しています

りんごの樹の寿命は、普通40年と言われていますから、長寿です

「緋の衣(ひのころも)」は、かつて全国一になった事もある品種で、日本人が初めて栽培で結実させた品種でした

余市に移住した会津藩士は、開拓使から推奨されたりんご栽培をに挑み、明治12(1879)年、待望のりんごが初めて結実させたのです

このりんごの名前は、幕末に会津藩が京都守護職に任じられた際に、孝明天皇から下賜された「緋の御衣」と同じ色のりんごだった事から命名されたのです

この日本初めてのりんごを結実させたことから、余市在住の旧会津藩士は、「りんご侍」と呼ばれる事になりました


■ホーレス・ケプロンと「農業現術生徒」

余市へ移住しても開墾と農作業に追われ、侍から農家へとすぐに移行できたわけではありません

開拓使は、責任開墾を奨励し機械と農耕馬を導入します

更に、農作物の販売のために「余市開墾会社」を設立して移住者の定着を図りました

北海道には、すでに幕末に旧幕府の榎本軍から99年の租借地の七重で、プロシア人のガルトネルがりんごの苗を持ち込んでいました

明治政府は、明治3年11月に、この租借地契約を6万2500ドルの違約金を支払って取り戻して、開拓使官園を開きます

黒田清隆長官は、開拓専門家を招くためと農業視察で、明治3年の年末にアメリカへ渡っています

この時に、アメリカ東部で、りんごの苗木(75種類)を購入しています

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ホーレス・ケプロンが、開拓使顧問として黒田清隆の要請に応えて来道したのは、明治4年の7月(8月説もあり)の事でした

ケプロンは、北海道の開拓と西洋農業技術の導入と農業技術者の養成を提案しています

開拓使は、明治5年4月には、農業現術生徒の制度を設け、東京官園を実習所として全国から生徒を募集しています

公費で5年間の修行の後に、開拓使に勤務するという制度でした

その第1期生20人の中に、余市移住組から志願したのは、当時30歳の「中田常太郎」氏(現術1等生)がいました

他にも、静内に入植した士族の子弟などもいました

その東京官園で、ルイス・べーマーから果樹栽培を、エドウィン・ダンから家畜の餌養法や農業機械の使用法などを学んだのです

明治7年には、現術4等生に「金子安蔵」氏「東 轟」氏がいます

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エドウィン・ダンと一緒の金子安蔵氏

明治9年の札幌農学校の創立まで、東京官園で、8年「東 蔵太」「川俣友次郎」9年「木村猪和雄」「横山留三」氏が学びました

8~9年の現術生徒は、余市へ戻って農業経営に専念しています

現術生徒が余市に戻って来てから、開墾も進みました

ケプロンが、余市に立ち寄ったのは、明治6年8月21日で、一泊しています

余市側流域の農地や入植地を視察しています

ケプロンは、種や苗を供給していない事や、野菜の栽培が密植すぎる事などを指摘している


■りんごが実る

開拓使の種や苗の無料配布が始まるのは、明治8年頃でした

「かぼちゃ」「馬鈴薯」のほかに、りんごの苗446本、梨585本、杏5本でした

りんごの苗は、各農家に数十本配布されています

しかし、りんごの実など見たこともないわけですから、放置されたりしていたわけです

そこで、現術生徒だった川俣氏や東氏が、ルイス・べーマーから習った栽培から収穫までを指導して行きます

苗を移植してから、3年目の明治11年にりんごの花が咲きました

開花を見た事で期待が膨らみましたが、結実はしませんでした

翌12年、ふたたび開花し、花が散った後に小さな実が結実しました

しかし、この年は嵐が襲い、結実した成熟間近な実を雨や風が落としてしまうのです

その中で、山田村の「赤羽源八」氏と「金子安蔵」氏の樹は、嵐に耐えて実を残しました

これが、日本初の民間によるりんごの結実となったのです


赤羽源八氏のりんごを見た、総取締役の宗川茂友氏が、このりんごの色を見て

孝明天皇から恩賜された緋色の陣羽織と同じ色だとして「緋の衣」と名付けたと言われています

(宗川茂友が、この時点で余市に残っていたのか、帰郷していたのかは不明です)

赤羽源八氏の「緋の衣」が6個、金子安蔵氏の「国光」が7つと記録されています

***実際には、品種名が付けられたのは、明治33年で、当時は番号で呼ばれています

***(緋の衣は19号、国光は49号、紅玉は6号、祝は14号などです)


国光は病害虫にやられて、原木は現存していませんが、

緋の衣は、吉田観光農園から苗木が「会津平成りんご研究会」に贈られ、栽培に成功しています

余市移住の会津藩士が、育てたりんごの品種「緋の衣」が故郷に戻ったのです


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余市移住の会津藩士物語は、まだまだ続きがあるのですが

りんごの実の結実までを書いてみました


戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~前田克己著~

豆本の発行に尽力されました前田克己氏の追悼の意を込めて

会津藩士の余市移住から150年の節目に当たり記事を書かせて戴きました



<参考文献>


余市在住「会津藩士物語」前田克己
余市町史4~明治1
余市文芸42号~余市あれこれ~菅原一也
余市物語~朝谷耿三
小樽・後志の歴史
余市駅及び附近の変遷~計良幸太郎
余市町における、会津藩士の足跡~吉田浩一
北の青嵐選集~編:鈴木卓郎
旧会津藩士の足跡

ケプロンの教えと現術生徒~富士田金輔
りんごの歩んだ道~富士田金輔
りんご侍と呼ばれた開拓者~森山祐吾

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昭和12年の5月の「殉節碑」の除幕式(山田町開拓回顧録)より

右の建物が「日進館」で、左側の楡の木は平成16年に伐採されています

現在は奥の銀杏の樹が成長して殉節碑を護っている感じですね

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現在の殉節碑です


北海道に春が巡って来ました

余市町の美園墓地の丘の南面には、会津藩士の墓石が立ち並ぶ場所があります

故郷の会津若松に望郷の気持ちを持ちながら、そこに眠っています

昭和59年6月18日開拓記念碑に、旧会津藩士松平安保公の孫にあたる、当時の福島県知事で前参議員議員の「松平勇雄」氏が訪問しました

記念撮影時には、世が世であれば近づく事も出来ないお殿様がと最高齢者の水野ヒデさんは、余市まで来てくれたことに感動したそうです

この時に、記念樹として「オンコの木」を植樹しています

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松平勇雄さんは、2年後の昭和61年5月にも来町されました

その時には、水野ヒデさんが亡くなっていて、旧会津藩士の墓地も修復されたために寸暇の中墓参されたそうです


現在の開拓会津藩の出身の余市在住家(敬称略)

三宅権八郎、渡部岩三郎、小松勇三郎、水野生太郎、船橋市八、石山亀次郎、川俣与四之助、鈴木兼友、黒河内辰己、青木丑之助、佐藤駒之進、永岡長吉、東蔵太、中野新太郎、枝村伝八、永井辰治


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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その1
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その2
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その3
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その4
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その5
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その6
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その7
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その8
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戊辰150周年~余市在住「会津藩士物語」~余市豆本11より~ その9
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