「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その9

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その1

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その2

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その3

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その4

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その5

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その6

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その7

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その8


戦争が終わり、「りんごの唄」に癒された日本人です

りんごの唄 並木路子


この、リンゴの唄の作詞家の「サトウハチロー」さんの祖父の「佐藤弥六」氏は、青森りんごの指導者であり功労者です

りんご士族の一人として、りんごの栽培に携わり、「林檎図解」を書いています


戦地からの復員者が増えると、農園の人手不足は解消し、戦争で荒廃したりんご園は徐々に復活して行きました

昭和21(1946)年には、土地改革があり、小作人の土地所有が許されると、りんご園も増えて行きます

昭和22年には、農業協同組合法が出来て、農産物の出荷販売や権利などが守られるようになりました

同時に、農産物の育成者を保護する目的で「農産種苗法」が制定されました


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終戦直後に、青森県黒石市にある、青森県りんご試験場(現:青森県産業技術センターりんご研究所)で、続けられていた、りんごの選抜試験が結実します

守り続けていた交配試験樹の「果実形質試験」「経済試験」が行われました

「果実形質試験」とは、食味、果肉の硬軟、果汁の夥多、外形、色合いなどを選抜する試験です

「経済試験」とは、耐病性、栽培の難易、収穫量、貯蔵性などを総合的に判断し、地質や気候の適性などからの選抜試験です


日本で正式に交配し誕生した品種たち

<陸奥(むつ)>

昭和5(1930)年に、「ゴールデン・デリシャス」×「印度」を交配した実生の中の1本

試験結果「果肉は黄白色、肉質はやや粗、多汁で芳香あり、甘酸適和で食味、貯蔵性良好」とあります

陸奥と命名されたのが、昭和24年で、「農産種苗法」の第1号品種になりました


<つがる>

昭和5年の交配で「ゴールデン・デリシャス」×「紅玉」ですが、長い間、掛け合わせの「紅玉」が不明であって

種苗登録は、交雑試験から、45年後の昭和50年になってからです

両親の形状を受け継いで、肉質は緻密、果汁多く、酸味が少ない人気の品種です

世界でも人気がある品種だそうです(2002年に世界統計で21位)


<世界一>

昭和5年交配で「デリシャス」×「ゴールデン・デリシャス」

昭和49年に「青り4号」として発表されましたが、1個の重さが500gにもなる大きなりんごという事から「世界一」と言う俗称で呼ばれ、その後に登録されました

果肉は黄白、多果汁、酸味は少なく、食味良好の評価


青森県りんご試験場で誕生した他の品種

「北斗」「星の金貨」「あおり21」「千雪(ちゆき)=あおり27」などがあります

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岩手県盛岡市の農林省園芸試験場東北支場(現:果樹研究所りんご研究所)で交配育種された実生苗は

昭和14(1939)年~16年までで、総数13,775本だそうです

選抜され、淘汰され、最後まで残った登録品種が「ふじ」「あかね」「はつあき」の3本でした


<あかね>

昭和14年、「紅玉」×「ウースターペアメン」を交配して育てられた「東北3号」

昭和45年に、農林2号「あかね」と命名登録されました

果肉は白く、酸味が強い、味は淡泊


東北支場では、他にも

「はつあき(東北8号)」「きたかみ(東北2号×レッドゴールド)」「ひめかみ(ふじ×紅玉)」「さんさ(ガラ×あかね)」などがあります


<ふじ>

昭和14年に「国光(母)」×「デリシャス(父)」の組み合わせの実生で交配されました

昭和22~26年頃に結実、選抜試験を経て、昭和30(1955)年の秋、やっと納得のいく果実が結実したそうです

多果汁、甘酸適和、濃厚な味、香り良好、貯蔵良好との評価で「東北7号」となり、その後「農林1号の『ふじ』」として登録されました

交配から23年、多くの研究者の理想となる夢のりんごの誕生です


「ふじ」は、国光や紅玉を超える優良品種として大人気となり、日本だけではなく、今や世界の王座を占める品種となったのです


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群馬県の伊勢崎市にある群馬県園芸試験場(現:群馬県農業技術センター)で交配育成された品種には

「陽光」「新世界」「あかぎ」「ぐんま名月」などがあります


秋田県横手市の秋田県果樹試験場で交配育成された品種

「千秋」「アキタゴールド」など

北海道夕張郡長沼町の北海道中央農業試験場で交配育成された品種

「ハックナイン」「ノースクィーン」

岩手県北上市の岩手県園芸試験場で交配育成された品種

「黄王(きおう)」

長野県須坂市の長野県果樹試験場で交配育成された品種

「シナノゴールド」「シナノスィート」「シナノレッド」

その他、民間で生まれた品種

「王林」福島県の大槻只之助氏が、昭和27年命名「ゴールデン・デリシャス」×「印度」を交配育成、今でも大人気です

「金星」青森県の佐藤肇氏が、昭和29年「デリシャス」×「国光」を交配育成し、昭和47年に登録

「やたか」秋田県の平良木忠男氏が、「ふじ」の枝変わりから発見、昭和62年に登録

「未希ライフ」青森県の工藤清一氏が、昭和56年「千秋」×「つがる」を交配し、昭和56年登録

「秋映(あきばえ)」長野県の小田切健男氏が、「千秋」×「つがる」を交配し選抜育成、平成5(1993)年に登録

「トキ」青森県の土岐伝四郎氏が、「王林」×「ふじ」を交配育成し、平成16年に登録

「アルプス乙女」長野県波多腰邦男氏が、昭和39年に「内山紅玉」の自然交雑実生を養成し選抜した小りんご


日本人が、交配し育成した品種は、書ききれないほど多様で、面白いりんごが多いのです

まさに、モノづくりであり、芸術作品でもあるのです

これからも新品種は、続々と生まれ、育まれて行く

そんな風に続いて行けたら良いなと思います


ラストになる、その10で、全体をまとめたいと思います

「りんごの歩んだ道」―明治から現代へ、世界の“ふじ”が生まれるまで 読後その10(終)

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